水瀬いのりさんのシングル曲のサビのコード進行
ダメ生活ブログを見に来た方へ:これは、他にやらなきゃいけないことがたくさんあるのにこんなブログを書くことに時間を投じてしまった、というダメ日記です。
コード進行の知見を増やそうと思って、水瀬いのりさんが歌う曲のコードを調べてみようと思いました。シングルのサビだけなのは、まあ分量の都合なのですが、やっぱり多少なりとも聴く人の印象に残ることが意識されているだろうという考えのもとです。7 曲ありますが作曲の方はばらばらなようです。
曲は素敵な MV とともに 公式 Youtube チャンネル で鑑賞できます (でも歌詞カード開きながら聴くのもいいよね)。曲構成のネタバレ上等で行きます。
おことわり
情報は正確とは限りません (ここおかしくない?って思ったらコメントください)。が、できるだけ正確になるように耳と目と参考文献を駆使しました。
耳:ベースはちゃんと EQ かけてしっかり聴きました。適当に打ち込んで変じゃないか確認するためのシーケンサは Domino を使っています。
目:WaveTone でスペクトログラムを表示して鳴ってる音を調べました。特に 7th が鳴ってるかどうかとかをそれっぽくしようとするために使いました。
参考文献:以下のサイト・ブログ記事を参考にさせていただきました。コードの解釈の違いとかが結構あります。
- U-フレット
- https://wooooolong-tea.hatenablog.com/entry/2018/11/01/005042 (夢のつぼみ)
- http://makeo-blog.net/chord/minase_starrywish/ (Starry Wish)
- https://wooooolong-tea.hatenablog.com/entry/2018/10/19/223256 (TRUST IN ETERNITY)
記法とか
たぶん一般的に普及してるコード表記を使っているつもりです。慣習に屈してしまった。"dim" は m-5 か dim7 かわかりにくいので使ってません。親切~。omit5 とかはいちいち書いてないことがあります。そうだね。♭を b と書いたことがないひとだけが ♯ を # と書くひとに石を投げなさい。"%" means 前と同じ。
度数表記はそのままローマ字にしただけで、クラシックの和声みたいな書き方はしていません。平行調を区別しません、全部長調で書いてます。でも「マイナー 251」みたいな便利な言葉は使ってます。ドレミと言ったら主音がドです (移動ド)。
分析のヒントになればと、non-diatonic なコードに色を付けてみました。赤はご近所シャープ系 (# がつくのがファ・ド・ソな子)、青はご近所フラット系 (b がつくのがシ・ミ・ラな子)、黄は遠い子たちです。これ見やすくないですか? 流行れ! Q: #ソと bラが同じとかどうするの? A: 独断と偏見で意味合いを考えてなんとかしてます。
夢のつぼみ
Key Bb まだまだまだ~ | Bb | % | Am7-5 | D7 | Gm | % | Fm7 | Bb7 | | I | % | VIIm7-5 | III7 | VIm | % | Vm7 | I7 | 困難も恐れない~ | EbM7 | % | Bb/D | % | Dbdim7 | % | AbM7(9) | F7sus4(9) F7(9) | | IVM7 | % | I/III | % | bIIIdim7 | % | bVIIM7(9) | V7sus4(9) V7(9) | まだまだまだ~ | Bb | % | Am7-5 | D7 | Gm | % | Fm7 | Bb7 | | I | % | VIIm7-5 | III7 | VIm | % | Vm7 | I7 | (小さ)なワクワク~ | EbM7 | Bb/D | D7 F#dim7 | Gm | Cm7 | % | F7sus4(9) | % | | IVM7 | I/III | III7 #Vdim7 | VIm | IIm7 | % | V7sus4(9) | % |
メインの進行はカノンに VIm に対するマイナー 251 や IV に対する 251 を入れた形で、その結果 non-diatonic なひとたちが登場してます。
V7sus4(9) と書きましたが、5th の音はたぶん鳴ってなくて音としては IV/V みたいな。それぞれ V7 に解決してるかは微妙なところで、現代的 (?) な感じが出ますね。B メロの Key G から転調してくるんですが、そこでも転調前後における V7sus4(9) を鳴らしています。
2 段目、IV7→I/III→bIIIdim7→bVIIM7(9) はドの音がキープされてて下降クリシェっぽい感じ、なのですがこういう dim の使い方難しい…… (bIIIdim7 ≒ II7、bVIIM7(9) ≒ IIm7 と見ると二次ドミナントの遅延解決と呼ばれるパターンに近いのかなと思います)。bVII 自体は浮遊感が出るやつでおなじみ、ここに特にポジティブな歌詞が乗ってます。
4 段目、III7→VIm のところでベースが #ソを経由してるように、V7→I でもベースがほんのりシを経由してて、マイナーでやったのをメジャーで繰り返してるのがなんだか元気が出ますね。
harmony ribbon
Key C (届)け声~ | C | G/B | Am7 | Em7 | FM7 | CM7/E | D | G7sus4 | | I | V/VII | VIm7 | IIIm7 | IVM7 | IM7/III | II | V7sus4 | (叶)えたい~ | C | Bm-5 E7 | Am7 | Em7 | FM7 | CM7/E | D | G7sus4 % % E7 | | I | VIIm-5 III7 | VIm7 | IIIm7 | IVM7 | IM7/III | II | V7sus4 % % III7 | (どん)な悲しみが~ | Am | G#aug | C/G | F#m7-5 | Am/D Em7 | F G7sus4 | AbM7 Bb | C | | VIm | #Vaug | I/V | #IVm7-5 | VIm/II IIIm7 | IV V7sus4 | bVIM7 bVII | I |
カノン。
IIIm7 が IIIm7/V じゃなくて、これはベースの 4 度下降で力強い感じが出てるって感じでしょうか。あと、V7sus4、流行ってますよね。
2 段目はメロは 1 段目と完全に同じですが III7 を入れて違いを出してます。そこでマイナー 251 を作った結果シレソがシレファになっていて、微妙な違いだけど大事ですね。
3 段目前半はよくある VIm のベース下降クリシェです。最後はよくある上がってくやつなんですが 2345 のところは単に IIm→IIIm→IV→V じゃなくてちょっと意外なコードが聴こえます (自信ない)。
Starry Wish
Key Ab 巡り巡る~ | DbM7(9) | Eb/Db | Cm7 C7(b9)/E | Fm Ab7/V | | IVM7(9) | V/IV | IIIm7 III7(b9)/#V | VIm I7/V | (悲)しみの~ | Bbm7 | Cm7 | DbM7 Dm7-5 | Csus4 C | | IIm7 | IIIm7 | IVM7 #IVm7-5 | IIIsus4 III | 閉じ込めた~ | DbM7 | Eb/Db | Cm7 C7(b9)/E | Fm | | IVM7 | V/IV | IIIm7 III7(b9)/#V | VIm | (え)がき出す~ | DbM7 Eb | C7/E Fm | DbM7 Cm7 | Fm | | IVM7 V | III7/#V VIm | IVM7 IIIm7 | VIm |
4536 すこすこ
IIIm7→III7(b9)/#V→VIm→I7/V→IIm7 の流れがすごくきれい。I7 というと IV に進みがちだけど、IIm に進むのも全然ありですね。I7/V と書いたけど実は 4 拍目はベースがドを弾いてるのもいい感じに働いてるのかもしれません。
2 段目は 234#4 で満を持して 5 を待機してるところに、IIIsus4→III が来るのがどっきりポイントですね。B メロ (Key Eb) の最後も同じく Csus4→C で、VIsus4→VI を IIIsus4→III に読み替えるタイプの転調をしています。転調に使ったコードをサビの折り返しでも使うという構造は夢のつぼみと同じ。
最後は 436 で憂いを持たせる (って言うんですかね) 感じなの好き。そう思って見てみると最初の 4536 もベースは 4436 なので、倍速 4536 のところ (4 段目の最初) が特に際立ちます。倍速 4536 自体はとてもよくあると思うんですけど (わたしもよく使います)、こうやって目立たせるのだな~と。
アイマイモコ
Key F Fly 空見上げたら~ | Bb C | Am7 Dm7 | Bb C | Dm7 Dm7/F | | IV V | IIIm7 VIm7 | IV V | VIm7 VIm7/I | (ひ)とつひとつ~ | Bb C | Am7 Dm7 | G | C | | IV V | IIIm7 VIm7 | II | V | あぁ この関係は~ | Bb C | Am7 Dm7 | Bb C | Dm7 Dm7/F | | IV V | IIIm7 VIm7 | IV V | VIm7 VIm7/I | (つ)れづれでも~ | Bb C | A Dm | Gm | C | | IV V | III VIm | IIm | V |
安心の 4536
2 や 3 をメジャーにする効果がすごくわかりやすいですね。教材かな?
気になったところは、4561 の 1 がはっきり I じゃなくて VIm7 が残ってる (気がする) こと。この響きは曖昧模糊っていうのかな。
この曲は「曖昧模糊っていうのかな」の部分が歌詞とメロが噛み合ってて覚えやすいし本当に好き。メロに関しては、「Fly」とか曖昧の昧の「い」とかのソが強調されててこれは IV に対して 9th で乗ってるので、9th だなぁという響きになってます (add9 すこすこオタク)。
Ready Steady Go!
Key E Fly High Fly High~ | A | B | G#m | C#m | F#m7 | G#7 | C#m | E | | IV | V | IIIm | VIm | IIm7 | III7 | VIm | I | Fly High Fly High~ | A | B | G#m | C#m | A | Bsus4 | E | % | | IV | V | IIIm | VIm | IV | Vsus4 | I | % | (き)みと手をつなごう~ | A B | G#m C#m | A B | E | A B | G#m C#m | A B | E | | IV V | IIIm VIm | IV V | I | IV V | IIIm VIm | IV V | I |
安心の(ry
ロック調なので単純明快な進行が似合いますね (とか言って細かなテクニックが隠れていたらどうしよう)。IV や V はパワーコードっぽく演奏されていると思います。ただ、1 か所だけ Vsus4 と言えるところがあってギターがソドレをはっきり弾いています (よね?)。
「Fly High Fly High」が IV に対して 9th で乗ってるので、9th だなぁ(ry
TRUST IN ETERNITY
Key A 誰のため~ | F#m | D | A | % | E | % | Bm7 | C#sus4 | | VIm | IV | I | % | V | % | IIm7 | IIIsus4 | 喪失がくれた~ | F#m | D | A | % | E | % | Bm7 | C#m | | VIm | IV | I | % | V | % | IIm7 | IIIm | (だか)ら Time is eternal~ | F#m | % | D | % | Bm7 | C#m | D | G | F# | % | | VIm | % | IV | % | IIm7 | IIIm | IV | bVII | VI | % |
6415 だ! 6415 は洋画感が出るらしいですが、そう言われてみると確かに壮大な感じがするような。415 から続く 2 まで 4 度下降でぐいぐい行くのでパワーという感じ (語彙力)。個人的に頭が 6415 に慣れてなくて最初はメロがなかなか覚えられなかったんですが、コードは長い I の感じがとても印象的でした。
一番のどっきりポイントは最後の IV→bVII→VI。フラット系からシャープ系へ直行する二段攻撃。ここ、「普通」の進行は IV→IIIm→VIm だと思います。6 をメジャーにするのはとてもわかる。3 はメジャーにするとメロに合わない。でも 3 の裏である b7 にするとなんかいい感じになる。すごい! さらに、VI が実は 1 番サビでしか聴けない (2 番は 3 段目がなくて、ラストはノンコード) ってのずるい、何回も聴いちゃいます。
実は 7 曲中この曲だけ明確な転調をしてないです。とはいえ、A メロは #ファ、B メロは bラ・bシ がかなり多くて、一時的な転調っぽく聴こえるところは多いですね。
Wonder Caravan!
Key D 僕らが目指した~ | D A | Bm F#m7/A | G D | Em A | | I V/VII | VIm IIIm7/V | IV I/III | IIm V | 踏み出せたなら~ | D A | Bm F#m7/A | G D | Em A | | I V/VII | VIm IIIm7/V | IV I/III | IIm V | (開ける)よ いつか届くまで~ | Bm A#aug | D/A G#m7-5 | Em A | D | | VIm #Vaug | I/V #IVm7-5 | IIm V | I |
カノン。音楽隊が行進してるみたいな曲調なのでカノンが似合いますね。
2 周した後いつもの VIm のクリシェが来るのも harmony ribbon と同じ。一方 harmony ribbon で使ってた V→bVI→bVII→I はサビ前で使ってて、代わりに最後は 251 でしっかり締めてます。
で、こうやって I の安心感をがっつり植えつけておいてラスサビは 2 段目の IIm→V から短 3 度上に転調した A メロが入るとこがこの曲の魅力ですよね~これいいよね~~
おしまい
7 曲のうちいちばん好きなのは Starry Wish かなーーアイマイモコもいいしなーーーんーーーー。他の曲にもここすきポイントをたくさん見つけられました。
これだけでもちゃんと聴いてちゃんと考えると勉強になりますね!!! 勉強になったのでわたしもどっきりな曲を作っていきたいです。